文:森山奈保美

2024年11月、フィンランドの科学者チームが「ASUMIA 科学と芸術を通じて、より持続可能な暮らしを探る」展を東京で開催

BIOSYS北カレリア国際成長エコシステムのメンバーも来日

2024年11月、BIOSYSエコシステムのタスクフォースメンバーが、森林バイオエコノミーに関する最新の知見と熱意を携えて、フィンランドのヨエンスーとヘルシンキから来日しました。目的は、東京、長野、北海道において林業分野のパートナーと協議するためです。

スーツケースには、丁寧に準備されたプレゼンテーション資料に加えて、展示用のポスターやオブジェ、試食品としてふるまうために用意された北カレリア産食材を使った食品のサンプルも詰め込まれていました。

2024年11月11日から12日にかけて、ヘルシンキ大学教授(木材・科学・ウェルビーイング学)で、フィンランド天然資源研究所(LUKE)の上級研究員でもあるトゥーラ ユスケ博士とフィンランドの科学者グループが、東京の文化的発信地である表参道エリアで「ASUMIA 科学と芸術を通じて、より持続可能な暮らしを探る」を開催しました。会場は、ライフスタイル分野の人気ブランドが立ち並ぶ裏通りにある全面ガラス張りのミニマルなイベントスペース「ミルギャラリー神宮前 MIL 2ND」です。

受付
左から:BIOSYS国際成長エコシステム コミュニケーション スペシャリストの森山 奈保美、スサンネ ヘイスカ博士、ホセ=マルティン ラモス=ディアス博士、トゥーラ ユスケ博士、マルクス ヒルヴォネン北カレリア地域知事、ジェシカ スミス氏、ヴェンラ ユスケ氏
会場の様子
《Tree of life(生命の樹)》 エボリューション イン アクション、トゥーラ ユスケ、デザイン ペトロネラ、Fabric mycorrhiza、合板、2024年

トゥーラ ユスケ博士のアイデアから生まれたASUMIAは、博士の研究テーマである「建築環境と周囲の自然が知覚的・心理生理的なウェルビーイングに及ぼす影響」を芸術的に表現したものです。

展示ポスターには次のように記されています。「ASUMIAは科学的要素と芸術的要素を融合させることにより思考への刺激を試みる展示で、生命体間の時間的なつながりを示しながら、建造環境におけるウェルビーイングを表現いたします。相互育成、共生関係を通じて、また、すべての生命の源である自然サイクルの一部として物質とあらゆる生物の価値を認めるという行為を通じて、都市生活をより良いものにするために何ができるかを探ります。フィンランドの自然をもとに生み出されたイノベーションも紹介しており、フィンランドの自然を深く感じられる場ともなっております」

本展は、昨夏にヘルシンキで開催された大規模な展覧会を再構成したものです。

企画・制作を担当したユスケ博士は次のように語っています。「科学と芸術を融合させることで、より多くの人々に私たちの研究を知っていただくことができただけでなく、国際的な協力や交流を通じて、私たち自身も新たな視点を得ることができました」

《Wax Tree(ワックス・ツリー)》、《Photo Collages and Poems from Taiwan Research Exped­i­tion of Urban Environments(台湾での都市環境調査に着想を得た写真コラージュと詩)》 トゥーラ ユスケ、2024年
《Being and Becoming – Resid­ents of Mind and Body(存在と成長ー心と身体の住人たち)》 トゥーラ ユスケ、乾燥スコビーセルロース「レザー」、プリント写真、詩、手の模型、2024年
《Breath In, Breath Out(ブレス・イン、ブレス・アウト)》 ササ トカルカン、2024年、3分間の360度映像

出展者の一人であるジェシカ スミス氏は、科学と芸術を融合させた自身の作品を来場者に紹介するために、またASUMIA展を運営するユスケ博士をサポートするためにヘルシンキから駆けつけました。

左から:スミス氏のインスタレーション作品《The First Inter­na­tional Street Trash Award 2024(第1回国際ストリートトラッシュ賞2024)》を囲むトゥーラ ユスケ博士、マルクス ヒルヴォネン知事、ジェシカ スミス氏
《Wing Binders – Resid­ents of Golden Cage(ウイング・バインダー – 金の籠の住人たち)》 トゥーラ ユスケ、ジェシカ スミス、2024年

LUKEのスサンネ ヘイスカ上級研究員(イノベーション&共同創造部門)とホセ=マルティン ラモス=ディアス上級研究員(食品・バイオ製品部門)は、LUKEのラボエンジニアであるタル カリニエミ氏と共に、「ユニーク・フード・プロダクツ」プロジェクトを展示し、北カレリアの食材を使ったパスタやシリアルを紹介しました。展示されたパッケージの一部は、北カレリアの木材パッケージ会社、KOLO Designによる特注品です。

「ユニーク・フード・プロダクツ」の展示を来場者に説明するスサンネ ヘイスカ上級研究員(左)とホセ=マルティン ラモス=ディアス上級研究員(右)

ヘイスカ博士は次のように語っています。「私たちの研究は、食品会社が地元産の高品質な素材を活用して、革新的な食品を生み出す助けとなっています。これらの製品はおいしく健康的であるだけでなく、食品システム全体の持続可能性を高めるために必要な望ましい変化も促進しています」

《FUNgSU­LA­TION》 ヘルシンキ大学、2023~27年、《Reishi Antlers(霊芝の角)》 ピーター ペトロス、2024年、《Mycelium and Dream Dissolve Dicho­tomy of Life and Death Through Metamorphosis(菌糸体と夢はメタモルフォーゼによって生と死の二項対立を解消する)》 イルマ ヘイスカネン、ピーター ペトロス、ヨナタン スナピル、オツォ カウニスカンガス、2024年
《Feed; Self-portrait(食事;自画像)》 ユリア ヴァリス、油彩/キャンバス、2024年

ニューヨークのKPMGで米国サステナビリティ・マーケティング・リードを務めるラス アッカーマン氏は、同じくニューヨーク在住の経営コンサルタントである息子のアレクサンダー アッカーマン氏と共に日本を訪れている最中、ASUMIA展に立ち寄りました。「非常に革新的な展示会でした。独自性にあふれる多彩な作品に驚かされました。しかも、実際に研究に携わっている教授や科学者の方々から直接説明を聞くことができたので、さらに充実した体験になりました。多くの方にお勧めしたいです」

《FUNgSU­LA­TION》 ピーター ペトロス、トゥーラ ユスケ、キルシ S ミッコネン、パウリナ ランキネン、ユッタ ヴァリス、ミラ コポネン、映像、2024年
《Bio-based Antiviral Solutions from Finnish Forests(フィンランドの森から生まれたバイオベースの抗ウイルスソリューション)》 トゥーラ ユスケ、ヴァルプ マルヨマキ、スーザン クンナス
《Fruiting Bodies(実る身体)》 ノラ サンドグレン、2024年、自然写真コレクション、ミラ コッポネン、ササ トカルカン、2024年

写真:北カレリア地域協議会|桝谷玲子 All Rights Reserved無断転載禁止

ASUMIAは、建築環境、バイオベースの建築・装飾材料とそれらがウェルビーイングに与える影響を研究する複合的なプロジェクトの一部であり、ヘルシンキ大学が出資するNature Based Serenity Solutions、欧州連合がヘルシンキ大学やLUKEで実施しているLUONTEVA、BIOSYSといった研究プロジェクトの影響を受けています。

会場には、トゥーラ ユスケ、オツォ カウニスカンガス、森山 奈保美、ノラ サンドグレン、ヨナタン スナピル、ジェシカ スミス、ササ トカルカン、ユリア ヴァリス、ユッタ ヴァリス、ニンニ ヴェスターホルムの各氏による、科学と芸術を融合させた作品が展示されました。

The BIOSYS North Karelia Inter­na­tional Growth Ecosystem is run by Natural Resources Insti­tute Finland / Luonnon­varakeskus as a project lead, the Regional Council of North Karelia Pohjois-Karjalan maakun­t­aliitto, Univer­sity of Eastern Finland and MKN Itä-Suomi | Rural Women´s Advisory Centre (RWAC) of Eastern Finland. The project is funded by Renewing and Competent Finland 2021–2027, EU Regional and Struc­tural Policy Programme’s Just Trans­ition Fund – JTF, and Regional Council of North Karelia.

For more inform­a­tion about ASUMIA, please contact Dr. Tuula Jyske [email protected]

For more inform­a­tion about the “Unique Food with North Karelia Ingredi­ents”, please contact Dr. Susanne Heiska [email protected] and Dr. Jose Martin Ramos-Diaz martin.ramosdiaz@luke.fi

For more inform­a­tion about BIOSYS Ecosystem, please contact Naomi Moriyama [email protected]