岡田 隆 在フィンランド日本国大使がフィンランドの北カレリア地域を訪問
2024年8月30日、岡田 隆 在フィンランド日本国大使が、大使館の外交官2名を伴って北カレリア地域を訪問し、先進的な事業を展開している現地企業3社を視察しました。今回の視察は、翌8月31日「北カレリア地域の日」に合わせて開催された、BIOSYSによる北海道桜苗の植樹式への参加に合わせて実施されたものです。
Nordic Koivu社(トホマヤルヴィ市)

人口約4,000人のトホマヤルヴィ市は、北カレリア地域では中規模の自治体ですが、海外に事業を広げ、日本市場にアクセスしたいと考えている企業にとっては魅力的な場所です。トホマヤルヴィ市から世界に羽ばたいた企業のひとつが、Nordic Koivu社です。同社は世界有数の白樺樹液(バーチウォーター)の製造企業であり、主に中央ヨーロッパと日本を含むアジア地域に製品を輸出しています。世界最高品質と評される同社の白樺樹液は、消費者だけでなく、食品、飲料、化粧品、製薬企業などにも提供されています。
「長年、日本向けの輸出を続けてきましたが、今後はさらに拡大したいと考えています」と、Nordic Koivu社の共同創業者兼最高経営責任者(CEO)のアルト コルホネン氏は述べました。
コルホネン氏と、品質管理を統括するティーナ ホンカネン氏は、大使一行を製造工場に案内し、樹液の採取方法や事業の概要を説明しました。視察後は、ストレートタイプと濃縮タイプの白樺樹液がふるまわれました。
ミッコ ロッポネン市長によると、トホマヤルヴィ市は1990年代から2000年代にかけて、日本とビジネス・教育分野で活発な交流を行っていました。そのつながりは現在も続いています。このことは、共通の関心があれば、物理的な距離は企業・自治体間の協力の障害にはならないことを示しています。
Savon Voima 社 ヨエンスー発電所

BIOSYS日本プロジェクトの対象地域である長野県と北海道は、日本の多くの自治体と同様に、2050年までに再生可能エネルギーの利用を大幅に拡大することを目指しています。このことも、岡田大使がSavon Voima社のヨエンスー発電所を視察先に選んだ理由のひとつなのかもしれません。ヨエンスー発電所は現在、木質チップやピートといった地元産のエネルギー資源を小規模に使って、地域暖房・地域電力を生産していますが、これは2026年までに完全に廃止される予定です。
「当社は2027年までに電力生産をカーボンニュートラル化し、2030年までにエネルギー生産全体をカーボンニュートラル化することを目指しています」と、ヴェリ=マッティ クロネン オペレーション担当マネージャーは説明します。現在、Savon Voima社はヨエンスー市で大規模な投資計画を進めており、約6MW規模のヒートポンプや地域暖房用蓄熱設備などが建設される予定です。また、ヨエンスー発電所の近くでは、投資会社Taaleriが所有するJoensuu Biocoal社が欧州最大の工業用バイオコールの生産工場を建設しており、製造工程で発生する廃熱はSavon Voima社のヨエンスー市地域暖房ネットワークで活用される予定です。この地域では、他にもグリーン水素の製造拠点や太陽光発電所の建設計画も進んでおり、ヨエンスー発電所を中心に一大エネルギークラスターが生まれつつあります。これは、かつては石油やピートを主燃料としていた発電所が、ほぼカーボンニュートラルな近代的発電所へと進化し、その周囲にグリーン移行を支える企業が集積するモデルケースとして、日本のパートナーにとっても示唆に富むものです。また、北カレリア地域が森林・エネルギー分野で培ってきたノウハウや技術は、森林の利用や再生可能エネルギー生産の拡大に取り組む日本の自治体や企業にとっても有用性が高いと考えられます。
Arbonaut 社

3つ目の視察先となったArbonaut社は、北カレリア地域が持つ森林分野の専門知識は世界中で高く評価されていることを実証している企業です。創立30周年を迎える同社は、森林生態系インベントリ、森林経営管理、生態リスク評価、森林情報システムといった分野で培ってきたノウハウをオーストラリアや南米諸国など、世界各地に輸出しています。
大使一行は、トゥオモ カウランネ会長兼社長、ヤリ キンヌネン最高営業責任者(CSO)、事業開発担当のシミズ ヨシト氏、ミッコ サーリマー森林事業管理責任者から、同社の事業概要に関する説明を受けました。特に話題となったのは、同社が近年、日本で展開しているプロジェクトです。
Arbonaut社は現在、長野県の精密林業計測株式会社と共同で、地域の特性に合わせた情報システムの開発に取り組んでおり、森林計画プロセスのデジタル化や、意思決定を支援する地図の作成などを進めています。意見交換では、日本は技術先進国であるものの、林業のデジタル化はやや遅れているという指摘がありました。また、日本の森林面積は2,500万ヘクタールと、フィンランドよりやや広いにもかかわらず、山間部の急峻な地形や軟弱な地盤が森林資源の有効活用を妨げている点が課題として挙げられました。Arbonaut社は長年にわたり、日本と良好な関係を維持しています。「初めて日本を訪れたのは2000年前後でした。次は、今年の秋に日本へ行く予定です」と、トゥオモ カウランネ会長兼社長は述べています。Arbonaut社は、北カレリア・日本プロジェクトの第1フェーズ(2020~23年)にも積極的に参加しました。同社は、北カレリアの関係者との協力深化やプロジェクトによって培ったネットワークが、新たな事業機会や顧客の獲得につながったと評価しています。協働を通じて説得力が高まり、林業の持続可能を高めたいという日本のパートナーのニーズに対し、より実用的なソリューションを提供できるようになると期待されています。
今回の視察では、北カレリア地域評議会の森山 奈保美コミュニケーションスペシャリストから、BIOSYS北カレリア国際成長エコシステムについての紹介も行われました。森山氏は大使一行の訪問を歓迎した後、具体的なビジネス連携事例を紹介しました。BIOSYSエコシステムは、グリーンかつクリーンな移行を推進しながら、北カレリア地域の経済成長を支援しています。BIOSYSエコシステムのミッションは、北カレリアと長野県・北海道の森林バイオエコノミーおよび食品ソリューション分野のパートナーが長期的な関係を構築し、地域間連携、研究開発イノベーション、ビジネス活動を拡大できるようにすることです。BIOSYSはパートナーと共に、地域間のノウハウや情報の交換、共同開発、企業間の国境を越えた互恵的な取引の拡大を支援しています。今回の日本国大使の訪問は極めて有意義なものとなりました。今後も日本国大使館との良好な協力関係を維持しながら、北カレリア地域と日本の参加地域のさらなる発展に貢献してまいります。
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