天然秋田杉を使用して作られる「大館曲げわっぱ」は、経済産業大臣指定の伝統的工芸品です。時代を超えた美しいデザインと耐久性を兼ね備え、日用品として様々な用途に用いられています。
文:森山奈保美
2025年3月24日、フィンランドから来日した北カレリア森林バイオエコノミー国際成長エコシステムの代表団は、秋田県大館市にあるりょうび庵の工房を訪問しました。
ギャラリーでは、りょうび庵代表取締役の石倉良彦氏が、一つひとつの製品を手に取りながら、その用途や製作に込めた思いを語りました。


「曲げ」と呼ばれる木工技法を用いて作られる曲げわっぱ製品の中でも、特に広く知られているのが楕円形の弁当箱です。薄く削った木の板に塗装処理を施しているため、汁気を含んだ料理を入れても漏れることはありません。金属と異なり、木は熱を伝えにくいため、熱い料理を入れても、手に持った時にやけどをする心配がないという利点もあります。
りょうび庵では、伝統的な技法に現代的な感性を組み合わせることで、幅広い人々に愛される製品を作っています。例えば、曲げわっぱの胴に陶製の蓋を組み合わせた酒器は、京都・清水焼の窯元と協力して開発されたものです。これらの製品はフランスのパリでも販売されています。




りょうび庵は、東京・渋谷にあるホテルのためにオリジナルの片口酒器・ぐい呑みセットを制作しました。
石倉氏は北カレリアの代表団を工房に案内し、職人たちが一つひとつの製品を丁寧に仕上げていく様子を紹介しました。この工房では、すべての製品が貴重な限定品のように見えます。近年は機械を導入して自動化を進め、大量生産による効率化を図るメーカーもありますが、石倉氏はこう語ります。「私たちのやり方は時間がかかります。しかしその分、高い品質を実現できるのです」
代表団は、若い職人が熱湯に浸けられた何枚もの薄く長い板の中から、一枚を選んで取り出し、作業台の上で弁当箱の型に沿わせながら成形していく様子を見学しました。










筆者は、深蓋のついた楕円形の美しい弁当箱を購入しました。ヘルシンキに戻ってから、日本米を炊き、旬のグリーンアスパラガスとナスを焼き、赤と黄色のパプリカを薄切りにして、弁当箱に上品に詰め、すりつぶした煎り胡麻と刻み海苔をあしらいました。機能性と繊細さを兼ね備えた優美な器に、まるで宝石のように盛り付けることで、料理の味わいは一段と深まるものです。





写真:森山奈保美
りょうび庵の詳細については、以下のウェブサイトをご覧ください。
秋田COI-NEXT ソウゾウの森プロジェクト:森の価値変換を通じた、自律した豊かさの実現拠点
秋田の公立三大学が中心となり、森を活用した研究開発や人材育成を通して、産業・経済を活性化させることで地域社会における「自律した豊かさ」の実現を目指します。 https://en.akita-souzounomori.com/
フォレスト・ヨエンスーは、フィンランドの北カレリアで展開されている森林バイオエコノミーの産学官連携モデルです。
The BIOSYS North Karelia International Growth Ecosystem is run by Natural Resources Institute Finland / Luonnonvarakeskus as a project lead, the Regional Council of North Karelia Pohjois-Karjalan maakuntaliitto, University of Eastern Finland and MKN Itä-Suomi | Rural Women´s Advisory Centre (RWAC) of Eastern Finland. The project is funded by Renewing and Competent Finland 2021–2027, EU Regional and Structural Policy Programme’s Just Transition Fund – JTF, and Regional Council of North Karelia.
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